お金と生活の知恵、時々ふつうの30代

少しだけ金融に詳しい普通のサラリーマンが、お金や投資や生活について日々気付いたことをつぶやきます。

「複利」と「平均リターン」を混同して将来の期待リターンを語るべからず

 今日は私のPet peeve(過剰反応かもと認識しつつも見かけるとムムムムッと反応しまうこと)である、「複利」という言葉の誤用についてです。長いですすいません。

資産運用や投資の文脈で頻繁に使われている「複利」の意味合い

ネットで人々の資産運用や投資関連の考えやブログ、ツイッターなどを見ていると、「複利」は頻繁に登場します。以下のような文脈での利用をよく見ます。

  • 複利〇%で運用すれば、投資の元金〇〇万円が20年後には△△万円になり、◇◇万円も増えたことになる。複利効果ってすごい!
  • 将来配当で生活したいなら、元手として〇〇万円が必要。20歳から20年間でその資金を作るためには、開始時の保有資金××万円を複利△%で運用できれば40歳までに準備できる!
  • FIRE文脈:1年間の生活費×25倍を元手として年4%の複利で運用できれば、毎年4%分を引き下ろしても数十年に渡って元手を食いつぶさずに続けられる!

 

これらに対して私が感じる根本的な違和感は、いずれも株式や投資信託のような価格変動が大きい金融商品について「毎年X%で増えたら」という仮定的な将来の期待リターンや、値動きの結果としての過去の平均リターンと同義で複利という言葉が使われているということです。

複利」の意味は、以下の説明の通り「利子に利子が付くことにより、長期的には元手の増え方が加速すること」であり、その対義語は「単利」と言います。

たとえば、元金(もともとのお金)が100万円あり、この100万円を金利2%(年利)で1年間預金したとすると、1年後には102万円になる。この場合、2万円は、元金に対してついた利子である。この2万円も含めて(つまり102万円を)再び金利2%で1年間預けると、1年後には104万円となるのではなく、104万400円となる。この400円は、利子である2万円についた利子である。このように、利子にもまた利子がつくことを、「複利」という

長い期間でみると、複利の効果は非常に大きい。複利にするためには、利子を元金に組み入れて運用すればよい。上記の例では利子の2万円を元金100万円に加え、102万円を新たな元金としていた。

 出所:知るぽると「複利とは」

 

「株の配当金で不労所得ライフ」は「単利」の考え方

同じ記事より、↑の後半部が単利を説明しています。

これに対して、利子を元金に組み入れない場合、「単利」となる。上記の例で、利子の2万円を元金100万円に組み入れず、100万円のみを再び金利2%で預けたとすると、1年後には104万円であった(100万円+1年目の利子2万円+2年目の利子2万円)。このような運用を「単利」での運用という。

 出所:知るぽると「複利とは」

「株の配当金で不労所得ライフ」という考え方は、↑の例を借りると1年目には元金100万円から得た配当金2万円を生活費に使い、2年目にも元手の100万円から得た配当金を生活金に使い・・というのを繰り返すことです。その間に元金の100万円は増減するでしょうし、配当金も実際には(出し手の企業の業績等の事情により)増えたり減ったりします。しかし、得た配当金を生活費に充てるのではなく、配当を支払った企業の株を買い増すことで再投資をしなければ、「元手の増え方が加速」することはなく、基本的には「単利」の考え方でしかありません。

「高配当銘柄」と謳われる銘柄には過去長期にわたって1株当たりに支払う配当金を着実に増やし続けているところもあります(1年目は1株当たり10円、2年目は15円・・等)。このような株を保有していれば、確かに得られる配当金は毎年増えるかもしれませんが、これも「複利」とは何ら関係ありません。単に「毎年増配を続けている」会社であるということです(そして過去は連続増配を続けていた企業も、状況が変われば減配(前年度よりも一株当たりの配当金を減らすこと)はあり得ます。→直近だと日本たばこ産業JT)がよい例)。

 

複利」の考えが相応しいのは価格変動が小さく、利率が決まっている商品=預金や債券など

今や日本では預金利率はゴミ以下(=積もらぬチリ)なので、複利の効果をもって預けたお金が増える、と考える人はいませんが、理屈としては、預けたお金に対して利率に応じた利子が付き、翌年は元本+初年の利子の合計額に対して更に利子が付く・・と、まさに「複利」です。

一方、株式や投資信託では、過去から将来のある時点における価格の変動を、年平均に割り戻した「結果としての平均リターン」を「複利」と混同した使われ方が非常に多く目につきます。

株式や投資信託において前述の預金金利に相当するものは「配当金」や「分配金」ですが、これを再投資(=配当金から税金を払った後の手元に残ったお金を自動的に同じ銘柄の追加購入に回すこと)するのではなく、引き出して現金として使ってしまうのは、行動としては「単利」そのものです。

再投資しなければ、翌年に「元手+配当金」に対して新たな配当金をもらう、とはならず、あくまで「単利」で配当をもらっていることになります。

株式の株価や投資信託の基準価額そのものが動くことは単なる「値動き」であり、時間をかけて雪だるま式に増えることが数学的に見通せる「複利」とは別物と考えるべきなわけです。

 

複利」は将来リターンが予測可能、「平均リターン」は単なる結果

視覚的に示すためにこちらのグラフをご覧ください。

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Yr0に100の元金からスタートし、5年後(Yr5)に資産が161に増えた二種類の資産の推移とします。

二つとも最初は100で5年後は161に増えていますが、具体的にイメージする金融商品の種類はギザギザの青線が株式(毎年の値動きはバラバラで予測できない)緩やかな右肩上がりの赤線が利子付きの銀行預金です(※預金でこんなに増えることは現在あり得ませんが、当てはまる金融資産の特徴を表すものとして使用しています)。

青線を株価だと考えると、毎年上がったり下がったりを繰り返して、最終的にYr5時点には161になっていた、というものです。

一方、赤線は預金利率10%の銀行預金で、毎年預金額に対して10%の利子が払い込まれて、2年目以降は「元手100+累積の利子」に対して更に10%分の利子が払い込まれた結果、Yr5には161になった、というものです。

どちらも「開始時に100だった資産が年率10%で増えて5年後には161になる」のは一緒です。しかし、そこに至るアプローチは全く異なります。

青線における161とは「たまたま5年後というタイミングに到達していた価額」、赤線における161とは「当初から確定している利率で5年間複利で運用した結果」、です。結果は同じでも、プロセスは全然違います。Yr0時点で5年後の資産額がいくらになるかを予め予想できるのは赤線だけです

青線:「Yr0=100→Yr5=161となったのは、終了時点から逆算すると年平均10%のリターンで増えたことになるという結果論」

⇒ (結果的に)5年間の年平均リターン10%={(161÷100)^(1/5)}-1

赤線:「毎年10%の複利と決まっていて、Yr0=100から5年後のYr5には161になることは予め予測可能」

Yr1:100×(1+10%) = 110
Yr2:100×(1+10%)^2 = 121
・・・
Yr5:100×(1+10%)^5 = 161.051

⇒ 10%複利で5年間運用=100×(1+10%)^5

 

だからこそ、株や投資信託のように、「過去のある期間についてStart→Endの間の変動を年率に割り戻すと〇%」という計算はできたとしても、「X年後には△%増えている」ことを正確に予想することが不可能な商品に対して、確定した利率で毎年増える、という意味合いの「複利」という言葉を使うことは非常にミスリーディングであり、場合によっては危険でさえあると考えます。

厳密には「複利」という単語を用いていなくても、「今後毎年〇%で運用できたら」というような将来に向けての仮定として使っているものも孕むニュアンスは一緒です。

 

FIREの文脈に「複利の意味の勘違い」を当てはめる

これを今流行りのFIREの文脈に当てはめてみましょう。「複利の意味の勘違い」がワナになる可能性があります。

例文:

Aさんの年間生活費は300万円なので、その25年分=7,500万円の元手があれば、FIRE生活に入れると考えた。Aさんは現在25歳で、50歳でFIRE生活を開始したいとすると、運用できる期間は25年間ある。もしも現在資産を3,000万円持っていれば、これを3.7%の複利で25年間運用できれば50歳には7,500万円まで増やせそうだ。今の資産が2,000万円なら5.4%まで引き上げることができればよいし、1,000万円ならさらに高いが8.4%で運用できれば達成できそうだ。

「毎年確実に3.7%/5.4%/8.4%で運用できたら」というピンポイントな皮算用は無意味

確かに「毎年確実に3.7%/5.4%/8.4%で運用できたら」3,000万円/2,000万円/1,000万円の元手を25年後に7,500万円まで増やすことは計算上可能です。しかし、運用期間中に元手が大きく変動することなく毎年確実にこれらのような率でお金を増やせる現実的な金融商品は存在しませんので、このようなタラレバで語ること自体が意味がありません。そもそも、特定の増加率(%)で数十年間確実にお金を増やす手法を知っているなら、なにもFIREだとか配当金収入で生活だとか宣言せずとも、生きている限りずうっとこのペースで資産を増やし続ければよいわけですから。

 

いや、アメリカのS&P500指数は過去30年において年平均9%程度で上昇し続けているので、「25年で元手1,000万を7,500万円に増やす(=元手を25年で7.5倍に増やす)」ことはできたかもしれません。しかし、これはあくまで「過去の実績」であり、今後のどこか特定の25年間(Aさんが25歳になる西暦A年から数えて25年後の西暦A+25年という特定の時期)の期間にも同じようなリターンになる、つまり複利のように確実に・着実に増える、という確約は一切ありません。

この、「特定の将来期間におけるリターンが何%になるかは分からない」にもかかわらず、「過去は長期的に〇〇(S&P500など)は年率△%のリターンをあげてきた」を理由として将来にもこの%増加率がそのまま当てはめられると思っていることが(無意識的にであっても)「複利」の勘違いとセットになっていると思うわけです。

このような勘違いをしていると、いざ将来のどこかの時点においてリーマンショックやITバブル崩壊のような株式市場の暴落・低迷時期に遭遇すると冷静さを失い、よろしくないタイミングで損切ってしまって結局大損をする、ということになりかねないと思います。

加えるならば、20年以上という長期で運用を続けていれば、必ず一度や二度はこのような暴落・低迷期に遭遇しますので、これを避けて通ることはまず不可能と思って差し支えないでしょう。

「市場全体では大きく上がることも下がることも必ずあるが、長期的に均してみると結果的に年率〇%程度の上昇が過去には見られたので、今後も長期的には似た程度の上昇が期待される」とあるべきところを、「過去は長期で見ると上昇しているので、今後も上昇し続けるだろう、過去の実績と同程度の年率〇%程度で」と高を括っていると、暴落に直面した時に平常心で乗りきるということはほぼ不可能だと思います。ましてや、「複利」の意味の勘違いをしていたならば、これはなかなか取り返しがつかないダメージを(精神的にも、金銭的にも)受けるリスクがあると思います。

よって、「複利」という言葉の意味を理解しているかどうかは、お金や資産運用に対する理解度そのものを測る一つのバロメーターにさえなると勝手に考えています。

 

長くなりましたがこれでおしまいです。お読みくださりありがとうございました。

株価の「バリュエーション」とは?りんごを使った例え話

今回は、個別株式投資をしようと思った時に必ず目にする「バリュエーション」についてです。

例によってファイナンス理論的には小難しい説明があったりするのですが、そうではなく日常生活における例え話形式(りんご)を用いて説明したいと思います。

 

 

バリュエーションとは

バリュエーションとは、株価(上場している企業の株式の価値指標)を、その企業の中身と比して高いか(「割高」)、安いか(「割安」)、見合っているか(「フェア・バリュー」)を判断するため「測り方」、つまりは「人々がお互いに議論ができるようにするための共通化した物差し」の総称です。正確な和訳は分かりませんが、「投資尺度」などと訳されている例も見ます。

 一般的なものにはPER以外にもPBR、EV/EBITDA、PSRなど多数存在し、それらをまとめて「バリュエーション」(Valuation)と呼びます。

Valueという単語の意味

Valueとは名詞の「価値」の意味が一番浮かびやすいですが、「(価値を)評価する」という動詞の意味もあります。I value your opinion (highly) =「私はあなたの意見を(高く)評価する」という意味です。ここで注意なのは、動詞としてのValueは、必ずしもこの例文のように「高い」評価を意味するとは限らない、ということです。

I value your opinon as much as a pile of dog shit と言えば、「私はあなたの意見を犬のクソと同程度に評価する=あなたの意見はクソほどの価値しかありません」という意味です。

話がそれましたが、Valueから派生したValuationという単語でくくられるPERのようなバリュエーション指標はあくまで「人々が共通で語れるように決めておいた物差し」であって、それ自体が適正・割高・割安かが普遍的に決まっているわけではない、ということです。

「バリュエーション」を日常生活の例え話にすると?

「バリュエーションとは株価を評価する物差しの総称」と言ってもピンとこない人も多いと思いますので、以下では私が好きな果物の一つ、「りんご」を使った例えで説明します。

株に対して求めるもの、りんごに対して求めるもの

株を買う時に期待するものというのは、基本的には「金銭的なリターン」であり、具体的には「買った時の株価を上回る水準へ株価が上昇すること」です。りんごの例えでこれに相当しそうなのは、りんごを買う時に期待することが基本的に「おいしさ」であり、具体的には「最低でも価格見合い、できればそれ以上に『おいしかった』と思えること」です。いずれも「払ったお金以上の対価を得たい」ということが共通しており、それをより確実に(はずれを少なく)実現しようと色々と努力をするわけです。

りんごだったらなんでも同じ値段ですか?いいえ、違います

りんごで「払ったお金以上の対価を得たい」と一口に言っても、「激安でそこそこおいしいりんご」も「高くてとてもおいしいりんご」も、どちらも「払ったお金<おいしさ」と思える場合があります。

ですので、りんごの値段は産地・味・ブランド・見た目・大きさなど様々な視点から評価され、値段は様々です。また、同じりんごでもブランド重視でブランドりんごなら高い値段でも買う、という人もいれば、味に定評のあるりんご農園の同じ時期のりんごなら少々見た目が悪くてワケアリとして安く売られているものをあえて買う、という人もいます。更に言えば、同じりんごが大好きな人でも、1年間りんごを食べてないときに買うりんごと、365日りんごを食べ続けたあとの366日目に買うりんごでは、出したいと思う金額は変わるかもしれません。

それでも、「何を重視してりんごを買うか」は人それぞれだとしても「見合った値段or割安な値段でおいしいりんごを食べたる」ために購入判断をするのだと思います。

なお、「ブランドで判断する」という買い方も、(一見するとコスパ重視の人からするとナンセンスに思えるかもしれませんが)「このブランドならそれ相当のおいしさが担保されるだろう」と信じて買っているので、一応その人の中では「おいしいりんご」を求めるための行動としては理にかなっているのです(貧乏性の私には真似できませんが)。

「おいしさの水準に対して価格が割安」のりんごを探し当てるためのイチ指標=バリュエーション

世のりんご愛好家たちが「安くておいしいりんごがあったらすぐに分かる普遍的な指標」を一生懸命探しているとします。以下全くのでたらめですが、その指標の一つに「りんごの表皮についている斑点の数」がおいしさのヒントになる特徴だとしましょう(んなわけない)。

「表皮についている斑点に対する倍率」→名付けてPrice to Hanten ratio、PEHと名付けます。

さて、りんごの値段はPEH何倍になるでしょうか?

・・を考える前に、りんごにはいくつ斑点がついているかを知る必要があります。品種Aのりんごは斑点が約20~30個、品種Bは同30~40個あるものとします(※実際はもっと多いでしょうし当然ばらつきがありますが、例え話の便宜上このような設定にしてます)。

この情報だけで、以下の記述で正しいと言えるものはあるでしょうか?

  1. A種のりんごの適正価格は常にPEH 15倍、B種のりんごは同20倍である
  2. A種のりんごの過去3年の平均PEHは13倍だったけど、今年は15倍で評価されているのは高すぎであり、買うべきではない
  3. このりんごはB種なのに、斑点が20個しかない!価格は(斑点30個のりんごと同じ)600円・・ということはPEHは600円÷20個=30倍。割高だから買わない!
  4. りんごとは(品種を問わず)PEH 10倍以下なら安いので、スーパーで見つけたら買うべき

どれも正しいどころか、ナンセンスですよね。

 

1. A種のりんごの適正価格は常にPEH 15倍、B種のりんごは同20倍である
 ⇒同じ品種でも(a)その年の出来、その個体の熟し具合、店頭に並んでからの日数・・等々によって変わるから、常に同じPEH(=同じ値段)なわけねーだろ

2. A種のりんごの過去3年の平均PEHは13倍だったけど、今年は15倍で評価されているのは高すぎで、買うべきではない

 ⇒過去3年のりんごと今年のりんごでは同じ品種でも(a)のだから、例えば今年はたまたま不作で収穫量が少ない中で、とてもおいしくそだったりんごだったら、対価として300円払っても決して高くないかもしれない

3. このりんごはB種なのに、斑点が20個しかない!価格は(斑点30個のりんごと同じ)600円・・ということはPEHは600円÷20個=30倍。割高だから買わない!

 ⇒B種のりんごのおいしさを決めるのは斑点の数ではない(一つの指標かもしれないけど、それだけではおいしさは決まらない)ので、計算上PEHが30倍でも割高とは限らない

4. りんごとは(品種を問わず)PEH 10倍以下なら安いので、スーパーで見つけたら買うべき

 ⇒え、おバカですか?世のりんごと主フに謝罪してこい

 

とこんな具合です。

バリュエーションには普遍的な「適正水準」も「割安な水準」も「割高な水準」も存在しない

PERやPBRというバリュエーション指標について、よく「低PER銘柄特集」を投資メディアが掲載していたり、「PERが〇倍以下なら割安」というような書かれ方を目にします。

上記のりんごの例を踏まえると、このような書き口のメディアはゴミみたいなものだと思いませんか?りんごに固定的な「あるべきPEH」は存在せず、様々な条件により変動しうるのと同じように、PERにも「何倍だったら必ず安い・高いと言える」ような固定的な水準は存在しません。究極的には全て「時と場合と銘柄による」のです。

硬直的な「バリュエーション指標の〇〇で××倍以下なら買い」と断言するようなメディアはゴミです、信じてはいけません

バリュエーションは同じ品種のりんごでも異なりうるというメッセージが伝わったでしょうか。

他にも、株価のバリュエーション指標における考え方をりんごに例えて示します。

  • おいしいか否かが分からないりんごには高いバリュエーションを付与しにくい(すなわち、不透明、不確実、不安定なものは割引される)⇔業績の安定性、将来が見通しやすい企業には高いバリュエーションが付与されやすい(「プレミアム」が付与される)
  • 沢山のりんごが入った袋でのまとめ売りは価格が安い(大小良し悪し混在、一部のりんごは隠れていて状態が見えない等)⇔企業の株価バリュエーションに付与される「コングロマリットディスカウント」と言い、「よくわからないものはその単品・個別の価格の合計値よりも割り引いた対価しか払いたくない」

 などなど。

 

このテーマは意外に奥が深いので、また考えが整理できたら追加していきたいと思います。

 

「リスクヘッジ」という概念を日常に浸透させたい

前回までのシリーズもの(うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム:全5回)でちょっと息切れしてしまってしばらく時間が空いてしまいました。中身はともかくこういうのを毎日のように続けている人は本当にそれだけですごいと思います。

 

今回はちょっと趣向を変えて、「リスクをヘッジする」ことについての雑感です。

最近この金融ブログ絡みで色々な人たちのツイッターやブログを拝見していて、リスクをヘッジするという概念をあまり持ち合わせていない人も一定数いらっしゃるなーと感じていました。思ったのは、「ものごとがどちらに転ぶかは分からない中、『良い方に一方的にベットする』のではなく、ある程度同時に・常に良い側にもそうならなかった場合の側にも張る」という概念が薄いんだなーということでした。

頭では「過去の実績は将来を保証するものではない」と知りつつも、結局は「過去の実績が将来の実績にもつながる」と思い込んでいる節があると思います。

資産運用にしても人生の幸福にしても、理想は「最大化」ですが、「悪いシナリオに思い切り振れることをなんとしても避ける」ための準備を常にしておくことも大事で、その策を講じた上で資産にしろ幸福度にしろ「より大きく」すべく努力をすべきと個人的には思います。「最大化できるかもしれないけど、最悪シナリオになる可能性も相応にある」状態に自分を置いてしまわぬよう、潰せるリスクは潰し、ヘッジできるリスクはヘッジすべきだと思います。

 

さて、「ヘッジ」(リスクヘッジ)とは、本来は金融商品先物取引に応用されているかなり専門的な意味合いですが、我々の日常生活においての概念としての「ヘッジする」とは、シンプルにはリスクを軽減するために行う行為、と考えればよいです。

リスクとは完全になくしたり避けたりすることはできないので、あくまで「軽減する」のですが、それでも措置を取ると取らないでは随分違ってくるものです。

ヘッジの方向性

自分の日常生活において、リスクを軽減するために取れる行為の方向性は大雑把に分類できそうです。

  1. 分散する(種類、時間軸)
  2. 逆方向と組み合わせる

 

1.分散する(種類、時間軸)

より馴染みがありそうなこちらから説明します。

何かを「分散する」ことで、リスクを和らげることです。

資産運用で言えば、鉄板の「投資先の分散→特定の個別株への集中投資ではなくインデックスファンドを買うこと」、「時間軸の分散→一気に資金を投資するのではなくドルコスト平均法で時間的に分散して投資すること」が好例です。

しかし、もう少し日常生活へ範囲を広げて考えてみると、

夫婦の職業:私は比較的ハイリスクの虚業外資系金融専門職(一般的には大してつぶしがきかない)、妻は比較的ローリスクな実業(ニーズの高い具体的なスキルあり)

 ⇒職業・スキルのベクトルが全く異なるので、同時に失職するリスクが低い

(半分冗談半分本気ですが、私の業界で「夫婦揃って外資金融の営業職」とかだったりすると、「それ全然リスクヘッジできてないね、金融不況がきたら二人同時にとぶ(リストラに遭う)可能性あるもんなあ」などとよく話してます。当事者とも。)

とか、

家事:夫と妻で家事は「分業制」ではなく、「得意不得意はありつつも、それぞれが大体どの家事も満遍なくできるようにする」

 ⇒不測の事態が起きたり相手が何かしらの理由で家事ができなくなってももう一人がカバーすれば家庭の機能不全を回避できる

(これは完全な個人の考え(偏見?)ですが、「家のことは私が全部やるからあなたはお仕事頑張って♪」とか「カネは俺がしっかり稼ぐから、家のことは嫁よ全部頼んだ!」などという昭和スタイルの価値観をお持ちの人は、現代においては単に全くリスクヘッジができていない(そもそもリスクの概念すら理解していない)非常に心配な人たち、と私の中では静かにレッテルを貼られています。)

これもある種の「リスクヘッジ」(分散系)だと考えます。

 

2.逆方向と組み合わせる

こちらもまず資産運用で分かりやすい例があります。

資産運用①:日本の株式(円建て=為替リスクなし)と海外の株式インデックスファンド(円建て=元が外貨建てのものを円建てで買っている=為替リスクを取っている)を両方保有する

 ⇒円高・円安どちらに転んでもお互いをカバーできる(どちらかは損をするがどちらかは得をする)

資産運用②:日本没落リスクをヘッジするために、日本没落の際には日本を出し抜く当事者となろう国々の資産を保有する

 ⇒新興国株式インデックスファンドを通じてアジア諸国の株式を保有する

 

 

いずれも「Aとその逆側に位置する別のB」を同時に保有します。

 

日常生活での例では、・・うーんすぐに浮かびませんでした。あ、食料品の買い物をする際は「格安スーパー」と「お肉の専門店」を両方使うことで価格・味(満足度)のメリハリやバランスを取る!とか。まあこれは別に危機的な状況に対する「ヘッジ」ではありませんが。。また思いついたらおいおい!

まあしかし、大事なのは「とにかくいい方向に行くためだけの一方向の施策・努力のみをする」のではなく、一程度の「最悪シナリオだけはしっかり回避できるようにするための策を常時講じた状態にしておく」という考え方をあらゆるところで取り入れることだと思っています。

 

今日は適当ですがこれでおしまいです(ブログは続けることが大事!)

 

うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム(5・完):子供の銀行口座・証券口座開設の手順

今回は「うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム」の五回目(補足)です(一回目二回目三回目四回目)。

前回までで私の子供への資金贈与から子供の証券口座でNISA並びに通常の積立投資をする流れを説明しました。ところが、そもそも親権者(親)も子供も証券口座を持っていない、というような場合には、どこから手を付ければよいのかが結構分かりにくいです。そこで、今回はこの手続き上のプロセスを説明したいと思います。

必要な口座類:親子とも銀行口座と証券口座が必須、子供はNISA口座の開設手続きも別途必要

子供への贈与、子供名義での資産運用をするためには本人名義の銀行口座と証券口座が必要となります。銀行口座は学校や習い事を見据えて多くの人が作ると思いますが、証券口座の方は意外とややこしかったので、ここで補足として工程を説明したいと思います。

まず、口座開設の一連の流れのまとめです。

  1. 子供名義の銀行口座を開設する
  2. 子供名義の証券口座(未成年なので「未成年口座」と呼ばれる)を開設する。その際、親権者(親)名義の証券口座が必要なため、持っていない場合は子供の口座と並行して開設する
  3. 未成年口座と区別されたジュニアNISA口座を別途開設する(手続きは未成年口座と同時で可能)

図解するとこんな感じです。

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①子供名義の銀行口座開設

最初のステップです。図で丸で囲った部分です:

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銀行選びの基準

子供名義の銀行口座は子供の成長とともに何かと必要になるので、皆いずれは開設することになりますが、子供名義の積立投資をする上でも必須です。ネットで「子供 銀行 口座開設」などのキーワードで検索すると、①「少しでも金利が高いネット銀行がおすすめ」や②「ATMの数が多いメガバンクがおすすめ」とか出てきますが、どちらの理由も無視してよいと思っています。

①は、ゴミとカスを比較してどちらがよい、と言っているようなもので、所詮は誤差の範囲ですので、手段と目的のはき違えを避けるためにもこれは気にしなくてよいと思います。

②は、長期の将来的には「ATMから現金を引き出す」という行為も減っていくでしょうから、これも大したメリットにならないと思います。というか、どこの銀行でもそれなりに引き出せる場所(ATMなりコンビになりで)があるなら、それほど困らないと思います。

私として重視するポイントは、

  • 親子の銀行口座間の振込手数料

基本は親口座→子口座への入金が主体となるので、この振込手数料が無料だと便利だと思います。月に一回でも無料で振り込めるなら基本的にそれで事足りるので、子の口座を親と同じ銀行にすれば基本的にはOKだろうと思います。

  • 子の銀行口座⇔証券会社で作る証券口座間の入出金の手間

子供の銀行口座→子供の証券口座への入金も定期的に行うので、ここも見ておくべきポイントです。大抵は、「○○証券 銀行 入金」で検索すれば確認できます。なお、基本は「入金が即時反映」される銀行と証券会社の組み合わせを推奨します。入金手数料については無料が多いので、万一無料ではない場合は組み合わせを変えるべきかもしれません。

  • 親が利用しているお金のエコシステムとの親和性

例えば親がもともと楽天を多用しているので楽天銀行が便利であったりポイントが貯まりやすいとかであればこの点を考慮してもよいと思います。無論、↑(特に二つ目)を満たすことが条件ですが。

なお、子供の学校・習い事その他のための支払口座として、ネット銀行で特に困ることはないのかなと思いますが、親がメガバンクで口座を保有しているなら同じメガバンクにするのが無難なように思います。ゆうちょ銀行の口座がおすすめされる例も見たことありますが、個人的には特段ゆうちょ銀行でないと困ることはない印象です。

銀行口座開設の手続き

これは、ネットで完結するところもあれば支店へ出向く必要があるところもあると思いますが、それほど複雑ではないと思います。子・親それぞれの身分証明書、続柄が分かる書類、印鑑辺りでしょうか。

(補足)印鑑は子供専用のを作るのがおすすめ

ただ一点、子供の口座開設に子供の印鑑が必要な場合、私は子供専用の印鑑を作ることを推奨します。

1)親の印鑑を使い回すと、あとで「この口座にはどの印鑑だったっけ?」と分からなくなるリスクがあります。また、将来的に名義預金であると疑われないようにするためにも「これは明確に子供専用のです」とはっきり言えるようにするためにも有効です。

2)印鑑を作る際は、「子供の下の名前のみ」で作ることを推奨します。日本は夫婦別姓が認められないという残念な国家であり、これがいつ変わるか分かりません。そのため、子供が名字が入った印鑑を作ると、将来もしも姓を変えることになった時に何かとややこしいことになり、あとあと印鑑の変更の届出とかが必要になる可能性があります。20年後にはこのしょーもない印鑑文化はなくなっていてほしいですが、どうなっているか分かりませんし。

ちなみに私は娘の印鑑を印鑑の匠ドットコムで注文しました。速くて丁寧で全く問題ありませんでした。

 

子供名義の証券口座開設

 次が証券口座の開設です。この丸で囲った部分です:

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証券会社選びの基準

はじめに、親権者が既にどこかの証券会社で証券口座を持っているかどうかが選択の分かれ目になります。

(a) 親権者が証券口座を持っていない場合

子供が証券口座を開設するためには、その手続きを代理で行う親権者自身も口座を持っている必要があります。親権者が現在どこの証券会社にも証券口座を持っていない場合は、子供のとセットで開設手続きをします。基本はネット証券での検討を推奨します。SBI、楽天マネックスauカブコムなどなど。

よく「NISA向けの投資信託の取り扱いラインアップの充実度合」等による証券会社のおすすめランキングがありますが、ここでの趣旨はどの主要ネット証券でも取り扱っているようなメジャーなインデックスファンドへの積立投資ですので、無視して大丈夫です。前述の銀行口座との入出金時の相性は見ておくべきですが。

(b) 親権者がネット証券で証券口座を持っている場合

親が今後もそのネット証券の口座を保有・利用し続ける予定なら、子供の証券口座も同じネット証券で開設するのがシンプルでよいと思います。

(c) 店頭証券(例:野村、大和、メガバンク系証券会社等)で証券口座を持っている場合

この場合、選択肢は(1)同じ証券会社で子供の口座を作る、(2)新たにネット証券で親子セットで新規に口座を作る、となります。私は(2)のみを推奨します。

大事な理由としては、インデックスファンドを購入する場合、店頭証券とネット証券では前者の方が投資信託保有し続けるにあたって発生する信託報酬が高い場合があるからです(実例は後述)。例えるなら、フルグラをお高めのスーパーで買うかドラッグストアで買うかのような違いです。商品は同じなのに、前者は諸々運営コストが高い分商品の売価も高く設定されている、一方後者は仕入れコストや運営コストを抑えることで商品の売価も競争力がある水準に設定できる、みたいな感じです。

また、ネット証券は開設手続きもネットで完結するのでその点も楽です(必要書類の取り寄せに役所に行ったりする必要はあるかもしれませんが)。

 

どのネット証券で子供の口座を開設するにしても、NISA口座は一旦開設すると、あとから別の証券会社にその口座をそっくりそのまま移管することはできないことには留意が必要です。そういう意味でも大手のネット証券を選んでおけば間違いはないと思います。

一応参考になりそうなネット証券一覧を貼り付けておきます。

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出所:https://kabukiso.com/idiom/kodomonisa.html

 

証券口座開設の手続き

証券会社によって違いはあろうかと思いますが、多くはネットで口座開設用書類を請求し、郵送されてきた書類を記入し、必要な書類とともに返送、という手順が多いです。

以下の書類が組み合わせで必要になる場合が多いです。

  • 住民票の写し(親権者と子供の記載があり、「マイナンバーの記載あり」を指定)
  • 子供の健康保険証のコピー
  • マイナンバーカード/通知カードのコピー
  • 戸籍謄本

「申込書」は、「未成年口座開設用」とは別に「ジュニアNISA申込用」もあり、両方必要です。また、子供専用の印鑑で随所に捺印もします。

ややこしいポイントとしては、「親権者の状況」によって必要書類が微妙に違ったりする点です。例えば「親権者二人と子供が同居」「親権者が一人の場合」など。この辺りは申込書類の記入説明をよく確認する必要があります。

 

以上が(やや一般論な部分もありますが)口座開設のプロセスの説明でした。 

 

余談:中身が同じ投資信託がネット証券と野村証券では買い付け時の手数料が違う例

ポピュラーなインデックスファンドには三菱UFJ国際投信が運用しているeMAXISシリーズというのがあります。

こちら、実はネット証券と大手の店頭証券では微妙に違っているのです。同シリーズの「先進国株式インデックス」(日本を除く先進国に広く投資している投資信託)を比較すると、店頭証券(例:野村証券)では「eMAXIS先進国株式インデックス」という名前で販売されていますが、ネット証券では「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」と、Slimという言葉が入った名前で販売されています。Slimとはほっそりという意味です。これらは中身は全く同じです。

 

しかし、二つの投資信託の交付目論見書(商品の説明書きみたいなもの)を比較すると、信託報酬(投資信託保有し続ける対価として支払う費用)がeMAXISは年率0.66%に対しeMAXIS Slimは年率0.1023%と、0.55%ポイント以上違います。信託報酬とは、ファンドの基準価額の騰落とは関係なく「保有していれば必ず発生する費用」ですので、ここで0.5%ポイント以上もの差はかなり大きいです。それもファンドのパフォーマンスが同じとなれば、わざわざ高い手数料の方を選ぶ(=店頭証券会社で口座を開く)理由は何一つありません。

この背景を簡単に説明します。三菱UFJ国際投信は元々は「Slim」がつかない様々なeMAXISシリーズのインデックスファンドを、店頭証券を販売会社として提供していました。しかし2010年代に入り業界において手数料率引き下げ競争が起きた結果、同社は手数料率の低さから人気が上昇していたネット証券を販売会社としたeMAXIS Slimシリーズを作り、同業他社に対抗しました。三菱UFJ国際投信としては当然手数料率が高い元来のeMAXISシリーズの販売を増やしたいのが本心ですが、投資する消費者も「同じ(似た)商品なのにわざわざ手数料が高い方を買うのは馬鹿らしい」と気付いてしまったので、三菱UFJ国際投信としては渋々Slimシリーズを作ったのでした。結果、Slimシリーズは人気が高まりどんどん運用残高が増えていますが、元のeMAXISシリーズは新規に買う人はほとんどいなくなりました(当然です)。

 

ネット証券で買える「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」の信託報酬

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出所:P9 https://emaxis.jp/pdf/koumokuromi/252653/252653_20210127.pdf
野村証券(例)で買える「eMAXIS先進国株式インデックス」の信託報酬:

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出所:P9 https://emaxis.jp/pdf/koumokuromi/250910/250910_20210424.pdf

 

 毎度ながら長くなったのでここらで終わりにします。このシリーズ(うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム)もこれで一旦おしまいです。ありがとうございました。

うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム(4):ジュニアNISAを活用して積立投資

今回は「うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム」の四回目です(一回目二回目三回目)。

実際に実行し始めているプランの骨子

  • 毎年年初に「金銭贈与契約書」を作成し、一定金額を贈与する(子供名義の銀行口座へ振り込み)→前回の記事
  • それを子供名義の証券口座へ移し、ジュニアNISA枠を活用し毎月積立投資する(2021~23年の3年間)→全てインデックスファンド:構成比はJ-REIT 10%、先進国株式45%、新興国株式45%
  • 2024年以降は現行のジュニアNISA廃止により新たな非課税枠はなくなるが、通常の積立投資を続ける
  • (予定)二十歳になったら、銀行・証券口座の実質的な管理権限を本人に移譲する

子供名義の証券口座からジュニアNISA口座を作る

まずは子供名義の証券口座の開設についてです。

これがなかなか煩雑でして、まずは親権者名義の証券口座が必要(なければ子供の口座と並行して開設することも可能)→子供名義の口座(未成年なので「未成年口座」と呼ばれる)を開設→更にそれと区別する形でジュニアNISA口座の申し込み(未成年口座と同時に手続き可能)、となります。

しかも、(証券会社による違いはあると思いますが)手続きは郵送だったり、住民票の写しのような公的な書類も必要だったり、親権者一人だったり子供が別居だったりすると手続き内容が微妙に違ったり・・となかなかややこしいので、事前の書類準備期間含めて1ヵ月程度は見ておいた方がよいと思います。この辺の詳しい流れは改めて次回書く予定です。

なお、未成年口座を開設するにあたっての楽天証券の「よくある質問(FAQ)」が割と詳しいのでよろしければご参照を。

ジュニアNISA枠を活用し毎月積立投資する(2021~23年の3年間)

一応、ジュニアNISAの概略を(これでも十分わかりやすいとは言えませんが・・)。

ジュニアNISA廃止に伴う変更点と留意点:3つのポイント | 節税しながら、資産形成しよう | マネクリ - お金を学び、マーケットを知り、未来を描く | マネックス証券

めでたくジュニアNISA口座を開くことができたら、いよいよそれを金融商品へ投資するステップです。

自分のお金の運用ではなく、子供の将来のための資金の運用ですので多少異なる部分はありますが、基本は自分の運用と似た考えに基づいて投資先の配分を決めました。ただし、あくまで子供のための将来資産の形成が目的なので、「儲けをより大きくすること」が目的になってしまうような、例えば個別株やもっとリスクの高い金融商品への投資、利益を確定するために高い頻度での売り買いが必要となる類の資産は投資対象から除外します。そのような投資は私の自己資金で行っているので、子供の資金とは完全に分けることが肝要と思います。

以前書いた、私自身の投資信託の投資先配分の決め方について(下記リンク):

 これと基本的な考え方は似ていて、大半は日本国外の株式指数に連動するインデックスファンドへの配分です。自分たちは日本在住ですので、国外を中心に投資することで世界の成長を取り込めることと日本没落リスクをヘッジ(回避)する意図があります。

日本へのエクスポージャーとしては、私は自分の投資では日本の個別株式投資を「リスク高め・投入労力多め・(期待する)リターンも高め」という位置付けで実行しています。しかし、子供の口座、ましてやNISAタイプの口座では個別の株の売買を繰り返すことはできません。ところが、日経平均のような日本の株式指数に連動するインデックスファンドは長期的に上昇する確度が高いとは思えないため、買う気にはなりませんでした。

そこで、日本の「不動産投資信託」(通称「リート」(REIT))のインデックスファンドを一部組み入れることにしました。この理由についてはほぼ勝間和代氏の受け売りですので、参考リンクを以下に貼ります。

積立投資の金額

ジュニアNISAは制度上2023年までで終了となりますが、通常の積立投資は非課税メリットはないものの子供名義の口座で継続して行うことは可能です。そこで、21~23年は贈与額100万円に対しジュニアNISA枠80万円をフルに使い、贈与の残額の20万円を通常の積立投資に振り向けることにしました。

2024年以降は現行のNISA制度各種(一般、つみたて、ジュニア)は刷新されて「新NISA」になりますが、残念ながら未成年が使えるNISAは消滅してしまいます。ですので、NISA制度を活用した非課税メリットのある積立投資はゼロになり、贈与額100万円はまるまる通常の積立投資に向かいます。

ジュニアNISAにしろ通常の積立投資にしろ、私はどちらでも買い付けが可能なインデックスファンドしか買うつもりはないので、区分としては「非課税メリットが取れるジュニアNISA口座」と「非課税メリットがない未成年口座」と異なるものの、それぞれで買い付ける金融商品は同じにする考えでいます。

このように、どの年も贈与金額100万円の全額を積立投資に向けて、贈与のうち現金で残るのは細かい端数を除けば原則ゼロにするつもりです。子供が日常で使う現金はお小遣いやお年玉と言った一般的な収入の範囲内でやりくりしてもらい、贈与は普段簡単に手を付けられるお金ではなく、長期目線の資産運用であるためのお金、と使途を区別したほうがメリハリがあってよいと考えるためです。

以下がこれを図説したものです。

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購入する投資信託と投資比率・積立金額内訳

以上を踏まえて、ジュニアNISA口座と未成年口座の両方を使い、以下の3つの金融商品に年間総額100万円(ジュニアNISA口座で80万円、未成年口座で20万円)を12ヵ月にわたって分割する形で積立投資をすることにしました。

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(※厳密には、2021年については諸事情により6月からの積立開始となってしまったので、7ヵ月に分割する形で金額を割っています)

 

3つのファンドのウェイトを考慮した最終的な国ごとの投資配分は以下のようになります。

合成国別投資比率

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同じものを円グラフにするとこうなります。

合成国別投資比率(円グラフ)

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国別構成比ランキングでは1位米国(32%)、2位中国(19%)、3位日本(10%)と3ヵ国で6割強を占めていることになりました。ちょうど、覇権争いをしている米中と、板挟みで存在感が空気のような日本・・ですね。

ちなみに、当初は3つのファンドの構成比を日本REIT 20%、先進国株式40%、新興国株式40%にしてみましたが、それだと構成比トップ3が米国(29%)、日本(20%)、中国(17%)となり、気持ち日本が多すぎでアメリカが少なすぎかな・・と感じたので、結局10%/45%/45%としました。まあ、この辺はお好みです。

2024年以降は現行のジュニアNISA廃止のため通常の積立投資を続ける方針

2021年~23年までの3ヵ年についてはジュニアNISA枠80万円/年を上記の通りに積立投資をしますが、制度としてのジュニアNISAは2023年いっぱいで廃止になります。すなわち、24年からは新たな年額80万円の枠はもらえなくなります。しかし、23年までに買い付けた投資信託は一定の手続きをすれば24年以降も中身はそのままで子供が18歳になるまで非課税の状態で運用することは可能です。なので、18歳になるまでの期間中に「今だ」と思うタイミングが来れば売却して譲渡益を確定させることもできますし、そのまま最後まで保有し続けることもできます。

2024年以降の新たな積み立て分については、全額(贈与する100万円)を非課税メリットはない普通の積立投資の形で同じ投資信託を買い続けるつもりです。

色々調べている中で、ジュニアNISAを使っていたものの2024年以降も当面未成年(18歳未満)となる人が利用できる新NISA制度はあるか?という疑問に対してはっきりとした説明がなかなか見つかりませんでした。答えは「ない」です。そのため、23年までにジュニアNISAで買い付けた金融商品はその後も保有し続けることはできるものの、新たな投資については非課税のようなメリットは特にない普通の積立投資をするしかない、ということになります。

(補足)積立投資の買い付け頻度

積立の頻度ですが、私が使っているマネックス証券では積立投資は「毎日(月間総額〇万円を日割りで毎日少額ずつ積み立てる)」と「毎月(月に一度の指定日に一ヵ月分まとめて買う)」のどちらかの方法で買えます。ジュニアNISAでは後者の設定にしています。

ジュニアNISAははっきりと「1年間(暦年)の上限は80万円まで」と決まっているので、できるだけそれに近い金額できっちり買いたいと考えます。しかし、「毎日」の設定にしていると、例えば年末の時期には投資信託の購入の指図をした日と、実際に自分のお金が出ていく日に数日のラグが発生してしまいます。すると、年内に買い付けをしても実際に資金が出ていくのは年明け(=翌年)となり、この分は翌年のジュニアNISA投資枠から引かれる、ということが起きます。すると、その年によって年間の営業日数(土日祝日の日繰り)の違いなどによって微妙に金額がずれる可能性があります。そういうことを避けるために、「毎月の特定日(それも月をまたいで資金が出ていくことがないように月の半ばくらいまでの日)に買い付ける」設定にしています。

(予定)二十歳になったら、銀行・証券口座の実質的な管理権限を本人に移譲する

 二十歳にもなればある程度独立した大人に成長しているだろうという想定のもと、この頃には銀行・証券口座とも管理権限を本人に移譲しようと思っています。

・・・と言いつつ、2022年4月から成人年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられるようなので、2040年頃(遠いような近いような・・・)には「18歳からは大人という認識が当たり前」になっているかもしれません。そしたら18歳で権限移譲をするかもしれません。まあその辺はその頃になってまた考えます。

 

(余談)なぜジュニアNISAを使ったか

ネットの記事を色々読んでいると、利便性の低いジュニアNISAはあえて利用しない、という選択をした人が結構多数いらっしゃいました。

私自身はと言うと、子供のためのこの資金を当面現金化する必要はないであろうことを見越して、多少の手間があり、しかも3年間限定ではありますが、ジュニアNISAを利用することによる非課税メリットを取ることにしました。

2020年の税制改正で24年からのNISA制度の改正が発表されるまでは、ジュニアNISAでは「18歳までの引き出し制限」(18歳になるまでに引き出す場合はそれまでに受け取った配当金や譲渡益に遡及して課税されてしまう)というのがあり非常に使い勝手が悪かったのです。そのため、世の中一般としてはその制約は大きなデメリットと認識され、ジュニアNISAは不人気でした。

しかし2020年の改正により、24年以降はこの「引き出し制限」が撤廃されることになりました(※厳密には、払出しを行う場合は一部分だけの払い出しは不可で、保有している商品を全て払い出す必要があり、払い出し後はジュニアNISA口座自体が廃止されます。ただし従来のように課税はされません。)。これにより、主たるデメリットも消滅したことになります。そうとなれば、非課税メリットだけを純粋に享受できるので、21年~23年の3年間×80万円=合計240万円限定ではありますが、この制度を使うことにしました。

それでもジュニアNISAを利用しない人が挙げる理由には、

ジュニアNISAを利用しなくても子ども名義の未成年口座でいつでも投資はできる。しかも未成年口座なら損益通算(売却損が発生した時に、それを別の譲渡益と通算することで利益に対する税金を減らせる仕組み)ができるが、ジュニアNISA口座ではできない。投資は利益ばかりではなく損失が出ることもあるので、この仕組みを利用できる未成年口座を利用し、ジュニアNISA口座は利用しないことにした。

というのを見かけました。これに対する私の見解は、以下の通りです。

手続きな煩雑なジュニアNISA口座を使わずとも未成年口座で投資はできるし損益通算もできることは確かです。しかし、損益通算を使う=損が出ている状態で金融商品を売却をすることがある前提になりますが、私はそもそも長期で保有し続ける積立投資が目的なので、わざわざ損失が確定する売却をするつもりはありません。よって未成年口座で投資することのメリット(=損益通算ができること)は私にとっては特に魅力に感じませんでした。(無論、20年後にどうしても売却して現金化しないといけない、となった時に含み損の状態であれば損は理論上発生しますが、上記の投資信託に20年間積立投資をして、それでも含み損が出ているという可能性は極めて低いです。どうしてもそうなってしまった場合は、不運な人生だったと諦めます。)

 

まだ続きます(長い・・次で終わります)

 

うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム(3):「贈与契約書」を作って金銭贈与をする

今回は「うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム」の三回目です(一回目二回目)。

実際に実行し始めているプランの骨子

  • 毎年年初に「金銭贈与契約書」を作成し、一定金額を贈与する(子供名義の銀行口座へ振り込み)
  • それを子供名義の証券口座へ移し、ジュニアNISA枠を活用し毎月積立投資する(2021~23年の3年間)
  • 2024年以降は現行のジュニアNISA廃止により新たな非課税枠はなくなるが、通常の積立投資を続ける
  • (予定)二十歳になったら、銀行・証券口座の実質的な管理権限を本人に移譲する

はじめに①:なぜこのような煩わしい「贈与の正式な手順」をわざわざ踏むことにしたか

子供のためにジュニアNISA口座でお金を運用している人は多数いるので、それ自体は決してレアなことではありませんが、おそらくわざわざ贈与契約書を作成して・・とまでやっている人は比較的少ないのではないかと思います。

私はこれをやっている理由は大きく三つあります。

  1. 税金的に万全を期したい、後から自分のうっかりや税務署の突っ込みから税金を余計に取られるというような落とし穴を避けたいから
  2. 子供に対しての金融教育の一環としたいから(お金についての一つの対話の話題になりうる)
  3. 本格的な贈与や相続ということがより身近になる将来に向けて今から「小さな、しかし正式な贈与」を実行することで経験を積んでおきたいから

はじめに②:お金の流れの整理

子供がゼロ歳児なもので、まだお小遣いもなにもありませんが、長期的な資産形成をできる限り早く開始する(そしていずれ私の死をもって発生することになる相続を待たずして資産の移転を開始することで計画的に相続税を抑制する)ための最初のステップは「資金の移転」です。

具体的な流れとしては、

私名義の銀行口座→[贈与]→子供名義の銀行口座→子供名義の証券口座

となります。(ということは、贈与(とそれに続くジュニアNISAでの運用)を始める前に、まず子供名義の銀行口座子供名義の証券口座を開く必要があります→これについてはまた別記事にでも)

贈与でお金が動くのは最初の「私名義の銀行口座→子供名義の銀行口座」の部分ですが、そこから先(子供名義の証券口座)も当面実務上は親権者である私が管理することになります。子供が15歳以上になれば(本人が希望すれば)自分で管理することもできますが、二十歳までは(入金するのが私なので)少なくとも一緒に話し合いながら管理することを現時点では想定しています。

 

ここから本題です。

毎年「金銭贈与契約書」を作成して一定金額を贈与する

子供のためにお金を使う場面は当然たくさんあるわけですが、それとは敢えて分けた形でお金を「贈与」することにしています。

贈与 とは | SUUMO住宅用語大辞典

↑がごくごく簡単な贈与の意味です。少額の金銭の贈与については、基本的に契約書云々を気にすることはありませんが、暦年贈与(贈与を受ける者(受贈者)が一年間で合計110万円までは贈与税を課されることなく贈与を受けることができる)の上限に近い金額を十年単位で実施する場合は、累計金額がそれなりになるので「あとから税務署にいちゃもんを付けられないようにするために」贈与契約書を作ることにしています。

また、子供が大きくなった時に(理解できるようになるのは高校生以上くらいか?)、親子といえどもきちっとこのような形でお金のやり取りをしているということが分かるような、記録としても契約書を作っておこうと考えました。

贈与契約書の作成方法

私が参考にしたのはこちらのひな形です(千葉銀行より)。

このひな形の親切なところは、スタンダードな金銭贈与契約書(P1)に加えて、「受贈者(子供)が未成年で自ら署名できる場合」(P2)と「受贈者(同)が未成年で自ら署名できない場合」(P3)のパターンまでまとめて載せてくれているところです。贈与とは「あげる側」と「もらう側」の双方が贈与に合意して初めて成立するので(一方的にどちらかが「あげるだけ」「もらうだけ」では贈与と認められない)、意思も理解もない赤ちゃんに贈与できるのか?という疑問に対する答えは「可能」です。ただ、その際署名は誰がどうすればよいのかがちょっと分かりにくかったです。

子供が幼くて自らの意思で署名ができない間は、ひな形のP3を使います。下のピクチャーの通り、甲(=贈与者)は私が署名して、乙(=受贈者)はまだ赤子なので「法定代理人」として妻が署名をします。これでOKです。

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出所:千葉銀行

子供が自ら署名できるようになったら(区切り的には小学校に上がるころとか?)、ひな形のP2を使う予定です。実は、この時に贈与者の私は「甲」の欄だけでなく「乙の親権者」の欄にも署名をすべきなのか、ここは妻だけが署名をすれば事足りるのかは、まだはっきり分かっていません。まあ細かいことなので契約書が無効になるような間違いにはどのみちならないと思っていますが。

贈与契約書の日付

贈与契約書には「契約を締結した日付」が必要です。これは毎年1月中に行う方向で考えています(日にちは適当な都合のいい日で可)。年初は区切りとして分かりやすいのと、1月なら贈与してすぐに子供名義の銀行口座へ入金→それを証券口座へ入金することで1月からの12ヵ月間に均等に積立投資をできることが理由です。

契約書の中にはもう一つ日付があります。それは、贈与する現金を受贈者(=子供)名義の口座に振り込む期日の日付です。この日付は上の贈与契約書の締結日と異なっていても問題ありません。贈与契約書の締結日は契約書が効力を持つ日、振込期日は振込期日で別物なので。まあでも、便宜上一緒にしておくのが分かりやすいかもしれません。

贈与金額は?

金額の設定については、

(1)現在のジュニアNISAの金額上限が80万円/年であること

(2)暦年贈与の上限が110万円であること

を考慮して、私は区切りよく100万円としました。例えばですが、子供が生まれた翌年の年初から贈与を始めれば、二十歳になる頃にはちょうど100万円×20年=2,000万円の資産を移転できることになり、数字としても暦年贈与の上限いっぱいいっぱいを使い切ることよりも「区切りのよさ」を優先することにしています。

金額はお好きなように、だと思いますが、せっかく子供用にNISAを使うのであればその枠はなるべく多く使った方が得だと思います。

「111万円贈与して1,000円の贈与税を申告すればOK」はリスキー

なお、「暦年贈与上限110万円を少しだけ超える贈与をしてわずかでも贈与税を払うことで税務署に『ちゃんと贈与税払って贈与しているよ』アピールをする」という手法もちまたでは薦められているらしいですが、これは逆に悪目立ちする可能性があるため、推奨されません。税務署からすると、「ほう、わずか1,000円の贈与税を払う贈与税申告をわざわざやっているのか。何か事情でもあるのかな?どれどれ、この贈与申告書は受贈者が出さないといけないけど・・ん、筆跡からすると大人だな。ということは贈与者が代理で出してるのだろうな。ん、受贈者は乳(幼)児か。ちゃんと贈与者と受贈者の間で合意しての贈与なのかな?ん?これ毎年やっているのか。ん、実際は定期贈与だったり名義預金に該当するんじゃないか?」・・というように、変に目立つ可能性があるそうです。もっとも、税務署もこのような相対的に小粒な案件ではいくら調べたところで取れる追徴課税はたかだか知れてるので、実際は調査官の実績としてはもっと大きな案件を狙うことが多く、この程度の案件に税務調査が入ることは少ないかもしれませんが。

 

長くなってしまったので、無事に贈与が終わった後の証券口座入金→ジュニアNISAで積立投資、はまた次回

 

 

 

 

 

 

 

うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム(2):こういう人になってほしい

こちらの続きです。 

 

今回は、子供について現在私が考えている「こうなってほしい」方向性と、そう思うようになった背景です。

総じて金融リテラシーの高い人になってほしい

まずは自分のことで恐縮ですが。自分は現在30代で、日本で通った小学校~高校まででは金融のキの字も学びませんでした。昔からそこまで物欲は強くなかった(ただのケチ・・?)ので、お年玉を貯金しておくとかも苦ではありませんでした。就職した頃には多少貯金があり、お金の苦労も大してしていません。そこから外資系証券に(何も知らずに)入り、当初は仕事に忙殺されて金を使う暇も余裕もない期間が数年。金融・投資にかかわる仕事をしていたはずなのに、自分では投資も何もしておらず・・がさらに数年。そこからようやく自分でも色々資産設計(人生のCF計画表)や投資(個別の株式だったり、投資信託だったり)を実際に行うようになったのは比較的近年です(仕事面で少し余裕ができ始めたことも関係しているかも)。あ、家計簿は趣味なのでもっと前からつけ続けています。

きっかけがなければ金融リテラシーは低位なまま

で、こういうことってなかなかきっかけがないと自分から学ぶことも少ないなーという実感があり、日本だと(我々くらいの世代でも)企業勤めで自分のお金の管理や運用について「考えないといけないとわかっているけど時間もなくてなかなか始められない、どこから手を付けたらわからない・・結果、後回しになっている」という知人も多いなーという風に感じられます。

日本は基本的に相対的にどんどん貧乏になっていく方向にある可能性が高いので、それを是とするならばその中で「自力で生きていく」ための基礎的なリテラシーの一つに「金融リテラシー」も含まれると思います。なので、それを子供にも身に着けてほしいと思うわけです。

貯蓄(運用)・消費(=自分/家族)・寄附(=他人)の使い分けを知ってほしい

お金は貯める(増やす)だけでも使うだけでも人にあげるだけでもだめで、いずれについても目的とバランスが必要だろうと思います。三つ目の寄附というのはお金だけではなく自分の時間・労働力・知識を無償で提供するというのも含まれるかもしれません。これも日本だと比較的機会が少ないように思えるので、ある程度能動的に体験できるように取り組まないといけないんだろうなーとなんとなく思っています。

お金という存在に慣れておくことで、不必要にお金を忌避したり逆に目が眩んだりしないようになってほしい

これは最初の金融リテラシーにも通じる話ですが、お金に疎い人ほどお金(=価値保存の手段だったりモノを得るための対価として使うもの)を実態以上に特別視してしまう結果、必要なお金の話さえ家族内でなされない、ということになるのではないかと思います。

自分の収入や資産の保有状況を外でペラペラ話す必要はありませんが、私は家族内で親はおよそどの程度の収入を得ていて、どのような資産を保有していて、子供は自分の学費・生活費にどれくらいかかっているかなどをある程度把握・認識しておくべきだと思います。世の中には「配偶者の収入を知らない」という人も結構いて(それは個人の自由なので結構なことですが)、私はそうはできないな思っています。それでチーム(ユニット)として協同して家庭を運営していけるとは思えないからです(少なくとも、対等で「お互いさま」と思って協力し合う関係は)。

子供は家を出るまでは基本的には「お金を使われる側」ではありますが、家族を構成する一員として、家族生活がどのようなお金の流れの中で営まれていて、自分はどのような形でそれに貢献できるかということを考えてほしいなと思っています(そして親は子供に対して「お金の話を子供にするのは品がない」などと言って過剰に避けるべきではないと思います)。

逆に、親が言ってはいけないことの一つに「誰のおかげで(飯を食えてる・学校に行けてる・家に住めてる、等)と思ってるんだ!」というのがあると思います。このような「反論のしようのない責め方」は、元々完全に対等とはなっていない親と子の関係をより徹底的に不公平にするというようなマイナス効果しかないと思います。

親は子供に「お金で苦労はさせたくない」と願うものだと思いますが、これは「お金のことを何も知らない・触れさせない」とは違うと思います。また、お金の多少の失敗を経験することも必要だと思います。しかし自分でお金の基礎を知らないと、やってしまう失敗の類が取り返しのつかないことだったりするリスクもあるので、基本はできるだけ知った方がよいと考えています。

 

つらつら書きましたが、私の子供はまだゼロ歳児なので、これが画餅に終わることのないようこれから先軌道修正しつつやっていきたいと思います。

次回から、「現在実行/計画しているプラン」について詳細を説明したいと思います。

 

うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム(1):全体感

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2020年に子供が生まれました。それをきっかけに、子供が二十歳くらいになるまでのお金の計画を立てて、現在(色々試行錯誤しながらですが)実行中です。

 

①現在考えている「こうなってほしい」方向性
  • 総じて金融リテラシーの高い人になってほしい
  • 貯蓄(運用)・消費(=自分のため)・寄附(=他人のため)の使い分けを知ってほしい
  • お金という存在に慣れておくことで、お金を変に忌避したり逆に目が眩んだりしないようになってほしい
②現在実行/計画しているプランの骨子
  • 毎年年初に「金銭贈与契約書」を作成し、一定金額を贈与する(子供名義の銀行口座へ振り込み)
  • それを子供名義の証券口座へ移し、ジュニアNISA枠を活用し毎月積立投資する(2021~23年の3年間)
  • 2024年以降は現行のジュニアNISA廃止により新たな非課税枠はなくなるが、通常の積立投資を続ける
  • (予定)二十歳になったら、銀行・証券口座の実質的な管理権限を本人に移譲する
③このようなスキームを実行するにあたっての、よくある質問
  • 正式な贈与契約書は作る必要があるのか?
  • 子供に大金を無償であげると、金銭感覚が「正常」から逸するリスクはないか?
  • 積立投資の配分・中身はどのように決めたか?

 

まずはこれくらいでしょうか。

分割で詳細を書いていこうと思います。

 

以下が詳細のエントリーです:

「危機時」に有効な私のインデックスファンド押し目買いルール

以前、私の投資信託の積み立てに関してどのような考えのもと配分を決めているかを説明しました。

今回は、具体的にどのような投資信託の買い方をしているか、更に一歩踏み込んで「危機時」(リーマンショックや昨年のコロナ暴落など、世界的に株式相場が数ヵ月以上に渡って下落する時)にどのように対応しているかについて説明しようと思います。

基本の買い方:毎月一定額を粛々と積み立てる

これはなにも特別なことはありません。文字通り、株式市場が上がる日も下がる日も、雨の日も晴れの日も、なにも変えずに同じペースで積み立てていきます。私はネット証券を使っていますが、証券会社によって選べる買い付け方法は「毎月決まった日に1回」、「月々の投資総額を決めてそれを分割して毎日」、「好きな金額を月のうちの好きな日を選んで」、という具合に色々あります。どれにしよう、と悩むかもしれませんが、最終的には大差ありません(長期のバックテストでは小口にする「毎日」がわずかに高いリターンになりますが、まあ誤差の範囲です)。

最近投資を始めた人は、本格的な「低迷相場」を知らない

ツイッター界隈などで投資関連の方々を色々見ていると、インデックス投資は全世界や米国などが人気が高いようです。私の勝手な印象で恐縮ですが、この1-2年以内に投資を始めた、という方が比較的多いように見受けられました。そのような方は、コロナショックの暴落は経験していても、長引く「低迷相場」を経験したことはないと思われます。なんせ、世界的な「不況」もリーマンショック以降ありませんし(厳密にはコロナ後は「不況」になりましたが反発も歴史的なスピードだったのでちょっと感覚としては別物)、アメリカのS&P500という株式指数は過去10年(というかリーマンショック以降)を見ると何回か調整はしたものの基本的には右肩上がりですから。

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つまり、長引く不況による絶望感(「もうマーケットは戻らないんじゃないか」)や、遅々として上昇に転じない株式指数を沈む気持ちとともに眺め続ける、という経験がなく、それに伴う精神的な変化(上がっているときは誰だって楽観的ですし、今後それが続く気がしますし、往々にして「自分は投資のセンスがあるかも」と思い上がるものです)も知らないわけです。

しかし、このような低迷時期は遅かれ早かれ「必ず」やってきます。その時、どうしますか?

私の危機時の買い方:「一定以上下がったら自動的に買う」ルールを設定する

相場が暴落したり、暴落後もじりじりと下がり続けるときというのは、いつ底を打つかが分からず、どこまでも転落しそうな気がするものです。そんな状況でやると決めた積立投資を続けるだけでも大変な我慢が必要です(なんせ、下がり続ける中買い続けるわけですから)。しかし、必ずいつかは株価は底を打ち、(そのペースは予測できないにせよ)上昇に転じます。そして、安心できるレベルまで上昇が加速したり、景況感が最悪期を脱したりしてくると、「下がっているときになんで買わなかったのだろう」と悔しがるものです。

私は、(1)リアルタイムで「いつが底か」を当てることは不可能である(2)しかしいつかは必ず底を打って上昇に転じる、ということを是として、「一定(%)以上下落したら、機械的に単発で買い増しをする」ことにしています。これはあらかじめルール化しておくことが大事です。渦中にいるときにどういうルールに従って買うかということを考えるのは大変難しいので。そして、買ったところから更に下がっても気にしないことです(むしろ、もう一回買えるチャンスがくる、と考えます)。

色々な「ルール」の変数を変えてみて、過去の株式指数のデータでバックテストしてみたところ、個人的に「ルールが発動される頻度」と「そこで押し目買い(下がったところで買う、という行為)をした場合の累積のリターン」のバランスがよいと感じたのは、以下のルールです:

「過去2年間の高値から20%以上下落」したら押し目買いをする

検証した他の条件としては、例えば「過去2年間」の代わりに「過去3年間」・「過去1年間」や、「20%以上下落」の代わりに「10%以上下落」・「30%以上下落」です。また、対象とした株価指数は、日経225、MSCI先進国株式インデックス、MSCI新興国株式インデックスの3種類です。まあつまりこの組み合わせを全て検証してみたキモイ人が私というわけです。

「30%以上下落」だとルール発動頻度が非常に歴史的に少ないので、押し目買いをするチャンスが少なすぎると感じましたし、「10%以上下落」では逆で押し目買いの回数が非常に多いわりに、(下落率が小さく浅いので)そこからのリターンも小さく、結局積立額以上に押し目買い額が膨張してしまうことで長期の「積立投資+時々押し目買い」の予算を組みにくいと感じました。その点、「2年間/20%」は「ほどよい」気がしました。実際、ITバブル・リーマンショック・2015年のミニ下落相場・コロナショックと全てにおいて(上記3つのインデックスのどれかあるいは複数で)押し目買いの機会は到来していて、全て長期的にはパフォーマンスにはプラス寄与したというのがバックテストの結果でした。

 

以下のグラフは、2019年以降についての実際に私が買っている先進国インデックスファンドと新興国インデックスファンドのグラフです。

二つのグラフいずれについても、

青いグラフ(右軸):過去2年間の指数の高値に対しての下落率(つまり、その時が最高値の場合は上の方のゼロ%に張り付く)

赤いグラフ(左軸):そのファンドの基準価額推移

青い〇:「20%下落ルール」に基づいて実際にスポットで押し目買いをしたタイミング

となっています。

先進国インデックスファンド

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新興国インデックスファンド

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このように自分でルールを決めて押し目買いをすることにすれば、不況が訪れ、株式市場が低迷しても、「いつかはまた必ずよくなる」という信念さえ持ち続けることができれば、むしろこのような押し目買いのチャンスは怖いどころか「たまには来てくれても構わない」とさえ思えるようになります。無論、このような時期が来た時のための軍資金をこしらえておく必要があることは言うまでもありませんが。

これを2020年に実際にやったのに、今となっては「もっと買えばよかった」と思ってしまうのが、人間の欲望というものですが・・。

 

ひとまずおしまい

 

 

東レの社長インタビューが驚きの内容すぎた(その2)

前回の続きで、最近読んだ週刊東洋経済の記事についてです(無料登録で全編が読めます)。

前編:

後編:

 

「素材産業では女性の視点を入れるということ自体に意味はない」・・?

――ダイバーシティについて。経営中枢に女性の視点を入れると事業に広がりが出るという見方もありますが、どう思いますか。
それは(エンドユーザーに女性が多い)資生堂さんやユニクロさん(ファーストリテイリング)なら意味があるかもしれない。
でも、素材産業では女性の視点を入れるということ自体に意味はない。もっといえば、女性を何割入れてとか、取締役に女性を入れてとか、そういったことを外野の経営経験もない人が言ったりルールをつくったりするのは最悪だ。
問題は、やれ自由だ、ダイバーシティだというと、あたかもそれが正しいように聞こえてしまうこと。言葉の響きで。でもそれに何の意味があるのか。ダイバーシティが目的ではないはずだ。

このコメントをそのまま記事にした東洋経済に対する驚きも禁じ得ませんが・・。

「女性だからっていいわけではない」と言いますが、そうではなくて「高齢の日本人男性だけしかいない」という属性の偏重が問題である、ということだと思います。記者の質問の仕方(「女性の視点を入れると事業に広がりが出るという見方」)から、記者自身もダイバーシティが何たるかを理解していないのではないかと疑ってしまいます。

社長のこの理屈は、アメリカで「Black lives matter(アフリカ系アメリカ人の命を大切にしよう)」と言うと、これに同意しない人が「No, ALL Lives matter(アフリカ系アメリカ人だけじゃなくて、みんなの命が大切だ!)」と屁理屈で言い返すのと同じくらいナンセンスだと思います。(※別にアフリカ系アメリカ人以外が大切ではないとは一言も言っていないのに、勝手にそのような解釈を加えることであたかもBLMが逆差別である、というようなニュアンスを発して反対するだけのために反対するという無意味な「議論」)

そもそも、「エンドユーザーに女性が多い」業態でのみ「女性の視点」が意味がある、と考えているとすればそれ自体が女性蔑視甚だしく、それをまっとうな意見として述べているならば思ったより闇は深そうです。また、この理屈で言えば「経営の中枢に男性の視点が有効なのは、エンドユーザーに男性が多い業種である」ということになりますが、これは誰もがおかしいと感じるのではないでしょうか。

また、クオータ性(強制的に一定数/一定比率を特定の属性の人でポジションを埋めること)の是非は議論されていますが、「まず入り口として」クオータ性を導入してでもマイノリティーの比率を引き上げた方が長期的にはパフォーマンスが改善するということを確認したリサーチも発表されているくらいです。「ダイバーシティが目的ではない」とは確かにそうで「手段」でもあるはずなのに、「響きだけで」やっていると決めつけていることにも疑問を抱かざるを得ません。

その集大成が「素材産業では女性の視点を入れるということ自体に意味はない」というコメントではないでしょうか。世界の常識としてはこのような発言を大手メディアでしたら袋叩きにされても不思議ではありませんが、社長にとってはそれも「欧米追従の流れ」のせいであって、きっとなんとも思わないのだと思います。実に残念です。

 

ちなみに東レが属する繊維業界では(東レの名誉のために言いますと東レに限らず他社でもですが)未だに「キャンペーンガール」という時代遅れのことをやっていますし、本社の受付には「若くてキレイ」な女性を多数揃えていますし、ここには業界・企業の(私個人の感覚だけかもしれませんが)悪しき風習が今もなお生き残っていて、社長の言葉の端々からは「それが普通」という価値観がにじみ出てくるようでした。

東レが貫きたい独自のやり方では「結果」が出ていない

結局のところ、社長は「欧米の真似をするばかりでは意味がない」と言いながらも、東レ「独自の」やり方で進んできたこの20年以上を振り返りますと、企業としては実質的には足踏みをしているだけということを業績も株価も物語っているわけです。そして製品の品質データ改竄や、子会社の架空売上計上が起きているのも事実で、「社外の目で企業を監視するなんて不可能だ」と言いながら社内でも監視はできていないのが実態だと言わざるを得ません。

 

 最後に、もう一つ東レの業績推移のチャートです。私は企業の過去分析の一つとして「利益率」と「費用」の推移もチェックします。

こちらは東レ売上総利益販管費営業利益率の長期推移です。

(基本解説:「売上総利益(率)」ー「販売費・一般管理費(率)」=「営業利益(率)」)

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東レの営業利益率の長期トレンドは、景気の循環とともに上下しながらもわずかながら「右肩上がり」になっています。これだけを見ると、「そうか、東レは長期的に利益率が改善してきているのか」と考えられます。

しかし、中身を見てみると売上総利益率は長期的には右肩下がりです。つまり、「売上総利益(≒売上から製造原価を引いたもの)」は長期的には比率としては縮小してきているということです。

他方、販管費率も長期的には右肩下がりです。こちらは、「販売管理費(≒人件費、水道光熱費、旅費交通費など)」は年々圧縮されている、すなわち「費用削減」が続いているということです。

これらを総合すると、売上総利益率の低下を販管費の圧縮により相殺することで営業利益率は維持・わずかに改善させている」ということになります。ですので、理想とされるような「製品の付加価値・独自性・競争力を評価されて高い収益性を享受できている」結果としての営業利益率上昇とは意味が異なります。

これが業績が物語る「(欧米のやり方には流されない)東レ独自の経営」の結果です。

 

・・当初このインタビュー記事を目にして「面白いかも」と思った印象から、実際に東レの過去の業績の数字を調べてみた印象のギャップは大きく、自分でも残念な、複雑な気持ちです。まあしかし、テニスは好きなので、東京オリンピックでは大坂なおみ選手を応援したいと思います(もちろんテレビから)!

 

おしまい