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うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム(5・完):子供の銀行口座・証券口座開設の手順

今回は「うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム」の五回目(補足)です(一回目二回目三回目四回目)。

前回までで私の子供への資金贈与から子供の証券口座でNISA並びに通常の積立投資をする流れを説明しました。ところが、そもそも親権者(親)も子供も証券口座を持っていない、というような場合には、どこから手を付ければよいのかが結構分かりにくいです。そこで、今回はこの手続き上のプロセスを説明したいと思います。

必要な口座類:親子とも銀行口座と証券口座が必須、子供はNISA口座の開設手続きも別途必要

子供への贈与、子供名義での資産運用をするためには本人名義の銀行口座と証券口座が必要となります。銀行口座は学校や習い事を見据えて多くの人が作ると思いますが、証券口座の方は意外とややこしかったので、ここで補足として工程を説明したいと思います。

まず、口座開設の一連の流れのまとめです。

  1. 子供名義の銀行口座を開設する
  2. 子供名義の証券口座(未成年なので「未成年口座」と呼ばれる)を開設する。その際、親権者(親)名義の証券口座が必要なため、持っていない場合は子供の口座と並行して開設する
  3. 未成年口座と区別されたジュニアNISA口座を別途開設する(手続きは未成年口座と同時で可能)

図解するとこんな感じです。

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①子供名義の銀行口座開設

最初のステップです。図で丸で囲った部分です:

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銀行選びの基準

子供名義の銀行口座は子供の成長とともに何かと必要になるので、皆いずれは開設することになりますが、子供名義の積立投資をする上でも必須です。ネットで「子供 銀行 口座開設」などのキーワードで検索すると、①「少しでも金利が高いネット銀行がおすすめ」や②「ATMの数が多いメガバンクがおすすめ」とか出てきますが、どちらの理由も無視してよいと思っています。

①は、ゴミとカスを比較してどちらがよい、と言っているようなもので、所詮は誤差の範囲ですので、手段と目的のはき違えを避けるためにもこれは気にしなくてよいと思います。

②は、長期の将来的には「ATMから現金を引き出す」という行為も減っていくでしょうから、これも大したメリットにならないと思います。というか、どこの銀行でもそれなりに引き出せる場所(ATMなりコンビになりで)があるなら、それほど困らないと思います。

私として重視するポイントは、

  • 親子の銀行口座間の振込手数料

基本は親口座→子口座への入金が主体となるので、この振込手数料が無料だと便利だと思います。月に一回でも無料で振り込めるなら基本的にそれで事足りるので、子の口座を親と同じ銀行にすれば基本的にはOKだろうと思います。

  • 子の銀行口座⇔証券会社で作る証券口座間の入出金の手間

子供の銀行口座→子供の証券口座への入金も定期的に行うので、ここも見ておくべきポイントです。大抵は、「○○証券 銀行 入金」で検索すれば確認できます。なお、基本は「入金が即時反映」される銀行と証券会社の組み合わせを推奨します。入金手数料については無料が多いので、万一無料ではない場合は組み合わせを変えるべきかもしれません。

  • 親が利用しているお金のエコシステムとの親和性

例えば親がもともと楽天を多用しているので楽天銀行が便利であったりポイントが貯まりやすいとかであればこの点を考慮してもよいと思います。無論、↑(特に二つ目)を満たすことが条件ですが。

なお、子供の学校・習い事その他のための支払口座として、ネット銀行で特に困ることはないのかなと思いますが、親がメガバンクで口座を保有しているなら同じメガバンクにするのが無難なように思います。ゆうちょ銀行の口座がおすすめされる例も見たことありますが、個人的には特段ゆうちょ銀行でないと困ることはない印象です。

銀行口座開設の手続き

これは、ネットで完結するところもあれば支店へ出向く必要があるところもあると思いますが、それほど複雑ではないと思います。子・親それぞれの身分証明書、続柄が分かる書類、印鑑辺りでしょうか。

(補足)印鑑は子供専用のを作るのがおすすめ

ただ一点、子供の口座開設に子供の印鑑が必要な場合、私は子供専用の印鑑を作ることを推奨します。

1)親の印鑑を使い回すと、あとで「この口座にはどの印鑑だったっけ?」と分からなくなるリスクがあります。また、将来的に名義預金であると疑われないようにするためにも「これは明確に子供専用のです」とはっきり言えるようにするためにも有効です。

2)印鑑を作る際は、「子供の下の名前のみ」で作ることを推奨します。日本は夫婦別姓が認められないという残念な国家であり、これがいつ変わるか分かりません。そのため、子供が名字が入った印鑑を作ると、将来もしも姓を変えることになった時に何かとややこしいことになり、あとあと印鑑の変更の届出とかが必要になる可能性があります。20年後にはこのしょーもない印鑑文化はなくなっていてほしいですが、どうなっているか分かりませんし。

ちなみに私は娘の印鑑を印鑑の匠ドットコムで注文しました。速くて丁寧で全く問題ありませんでした。

 

子供名義の証券口座開設

 次が証券口座の開設です。この丸で囲った部分です:

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証券会社選びの基準

はじめに、親権者が既にどこかの証券会社で証券口座を持っているかどうかが選択の分かれ目になります。

(a) 親権者が証券口座を持っていない場合

子供が証券口座を開設するためには、その手続きを代理で行う親権者自身も口座を持っている必要があります。親権者が現在どこの証券会社にも証券口座を持っていない場合は、子供のとセットで開設手続きをします。基本はネット証券での検討を推奨します。SBI、楽天マネックスauカブコムなどなど。

よく「NISA向けの投資信託の取り扱いラインアップの充実度合」等による証券会社のおすすめランキングがありますが、ここでの趣旨はどの主要ネット証券でも取り扱っているようなメジャーなインデックスファンドへの積立投資ですので、無視して大丈夫です。前述の銀行口座との入出金時の相性は見ておくべきですが。

(b) 親権者がネット証券で証券口座を持っている場合

親が今後もそのネット証券の口座を保有・利用し続ける予定なら、子供の証券口座も同じネット証券で開設するのがシンプルでよいと思います。

(c) 店頭証券(例:野村、大和、メガバンク系証券会社等)で証券口座を持っている場合

この場合、選択肢は(1)同じ証券会社で子供の口座を作る、(2)新たにネット証券で親子セットで新規に口座を作る、となります。私は(2)のみを推奨します。

大事な理由としては、インデックスファンドを購入する場合、店頭証券とネット証券では前者の方が投資信託保有し続けるにあたって発生する信託報酬が高い場合があるからです(実例は後述)。例えるなら、フルグラをお高めのスーパーで買うかドラッグストアで買うかのような違いです。商品は同じなのに、前者は諸々運営コストが高い分商品の売価も高く設定されている、一方後者は仕入れコストや運営コストを抑えることで商品の売価も競争力がある水準に設定できる、みたいな感じです。

また、ネット証券は開設手続きもネットで完結するのでその点も楽です(必要書類の取り寄せに役所に行ったりする必要はあるかもしれませんが)。

 

どのネット証券で子供の口座を開設するにしても、NISA口座は一旦開設すると、あとから別の証券会社にその口座をそっくりそのまま移管することはできないことには留意が必要です。そういう意味でも大手のネット証券を選んでおけば間違いはないと思います。

一応参考になりそうなネット証券一覧を貼り付けておきます。

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出所:https://kabukiso.com/idiom/kodomonisa.html

 

証券口座開設の手続き

証券会社によって違いはあろうかと思いますが、多くはネットで口座開設用書類を請求し、郵送されてきた書類を記入し、必要な書類とともに返送、という手順が多いです。

以下の書類が組み合わせで必要になる場合が多いです。

  • 住民票の写し(親権者と子供の記載があり、「マイナンバーの記載あり」を指定)
  • 子供の健康保険証のコピー
  • マイナンバーカード/通知カードのコピー
  • 戸籍謄本

「申込書」は、「未成年口座開設用」とは別に「ジュニアNISA申込用」もあり、両方必要です。また、子供専用の印鑑で随所に捺印もします。

ややこしいポイントとしては、「親権者の状況」によって必要書類が微妙に違ったりする点です。例えば「親権者二人と子供が同居」「親権者が一人の場合」など。この辺りは申込書類の記入説明をよく確認する必要があります。

 

以上が(やや一般論な部分もありますが)口座開設のプロセスの説明でした。 

 

余談:中身が同じ投資信託がネット証券と野村証券では買い付け時の手数料が違う例

ポピュラーなインデックスファンドには三菱UFJ国際投信が運用しているeMAXISシリーズというのがあります。

こちら、実はネット証券と大手の店頭証券では微妙に違っているのです。同シリーズの「先進国株式インデックス」(日本を除く先進国に広く投資している投資信託)を比較すると、店頭証券(例:野村証券)では「eMAXIS先進国株式インデックス」という名前で販売されていますが、ネット証券では「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」と、Slimという言葉が入った名前で販売されています。Slimとはほっそりという意味です。これらは中身は全く同じです。

 

しかし、二つの投資信託の交付目論見書(商品の説明書きみたいなもの)を比較すると、信託報酬(投資信託保有し続ける対価として支払う費用)がeMAXISは年率0.66%に対しeMAXIS Slimは年率0.1023%と、0.55%ポイント以上違います。信託報酬とは、ファンドの基準価額の騰落とは関係なく「保有していれば必ず発生する費用」ですので、ここで0.5%ポイント以上もの差はかなり大きいです。それもファンドのパフォーマンスが同じとなれば、わざわざ高い手数料の方を選ぶ(=店頭証券会社で口座を開く)理由は何一つありません。

この背景を簡単に説明します。三菱UFJ国際投信は元々は「Slim」がつかない様々なeMAXISシリーズのインデックスファンドを、店頭証券を販売会社として提供していました。しかし2010年代に入り業界において手数料率引き下げ競争が起きた結果、同社は手数料率の低さから人気が上昇していたネット証券を販売会社としたeMAXIS Slimシリーズを作り、同業他社に対抗しました。三菱UFJ国際投信としては当然手数料率が高い元来のeMAXISシリーズの販売を増やしたいのが本心ですが、投資する消費者も「同じ(似た)商品なのにわざわざ手数料が高い方を買うのは馬鹿らしい」と気付いてしまったので、三菱UFJ国際投信としては渋々Slimシリーズを作ったのでした。結果、Slimシリーズは人気が高まりどんどん運用残高が増えていますが、元のeMAXISシリーズは新規に買う人はほとんどいなくなりました(当然です)。

 

ネット証券で買える「eMAXIS Slim先進国株式インデックス」の信託報酬

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出所:P9 https://emaxis.jp/pdf/koumokuromi/252653/252653_20210127.pdf
野村証券(例)で買える「eMAXIS先進国株式インデックス」の信託報酬:

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出所:P9 https://emaxis.jp/pdf/koumokuromi/250910/250910_20210424.pdf

 

 毎度ながら長くなったのでここらで終わりにします。このシリーズ(うちの子供の贈与・ジュニアNISAスキーム)もこれで一旦おしまいです。ありがとうございました。