お金と生活の知恵、時々ふつうの30代

少しだけ金融に詳しい普通のサラリーマンが、お金や投資や生活について日々気付いたことをつぶやきます。

「株主優待目当て」に株を買うことについて思うこと

6月下旬は株主総会の季節です(もう7月ですが)。それに伴い、期末の配当や会社によっては株主優待が送られてくる季節でもあります。株式投資界隈のニュースとかを見ていると「優待が届いた」とかそういうのをよく見かけます。

株主優待(会社によって保有株数・保有期間に応じてギフトとかをもらえる制度)は、「ちょっとしたボーナス」を得られるような感じがするので、それはそれで株式投資の一つの楽しみ方だと思います。ですが、株を買う目的が「優待目当て」になってしまうと本末転倒になるリスクがあるなあ・・と思います。

株主優待に対する私の基本的な考え方

  • 買った株に優待制度があればラッキーだが、優待制度ありきで(優待目的で)株は買わない
  • 個人投資家に人気の株主優待がある銘柄の株価は、特有の動きをすることがある
  • 「毎日が優待ライフ~」で過ごそうと思ったら大変な金額を株に投じないといけない(私にとっては優待からは投資のリスクに見合ったリターンは得られない)
  • (以下ループ)結論:株は「株価の上昇」を主たる目的として買うものであり、株主優待はあくまで「おまけ」であり、優待ありきで株を買おうとすると本末転倒になりかねない

株主優待を持ち上げるメディア媒体に対する私の不満

  • 株主優待の利回りはとても良くても2~3%程度で、多くはこれよりもかなり低い(1%未満とか)→優待そのものの経済的便益はそれほど大きくはないのに、やたらと持ち上げられていること
  • 優待によって得られる利回りよりも株価の変動による損益影響の方がはるかに大きいにもかかわらず、株主優待を持ち上げているようなウェブ記事では「元本の値動き(株価自体の変動)による損益変動」にほとんど触れられていないこと

(※利回り:得られるものの価値÷得るのに投じた金額。株主優待の場合は、「優待品の価値÷必要な株を買うのに投じた金額」)

具体的な株主優待の例と、その優待利回りの考え方

ではまず初めに株主優待の実例を見てみます。

株主優待ランキング」なるものがあったので、それを参考に仮に上位に入っている優待銘柄を買った場合のことを考えてみます。こちら:

株主優待人気ランキング2021年版:マイベスト総合 | 知って得する株主優待

この中からいくつか、優待品の金額が分かりやすいものをピックアップしてみます。

すかいらーくホールディングス(3197)の場合

https://yutai.net-ir.ne.jp/company/3197/

ランキングでは2位に入っています。

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すかいらーくの優待は「レストラン株主優待カード」というもので、特に株を保有する最低単位(100株)を買って保有していると、年に2回2,000円分の株主優待カードがもらえるそうです。

以下が、この株主優待で得られる優待利回り算出に必要な算数です:

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この通り、(今の株価1,550円で計算すると)155,000円分のすかいらーくの株(=100株)を買うと、2,000円分のレストランカードがもらえ、これは利回りとしては2.6%に相当する、ということです。

この2.6%、優待利回りとしてはかなり高い部類に入ると思います。いいですね。

日本たばこ産業(2914)の場合

続いて4位に入っている日本たばこ産業JT)です。私はたばこが大嫌いです。

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中身はよくわかりませんが、数千円「相当」の自社グループ商品がもらえるそうです。こういうタイプの優待だと、カタログから選ぶというのが多いですがJTはどうなんでしょうね。

同様に、この株主優待で得られる優待利回り算出に必要な算数です:

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優待利回りは保有株数によってまちまちですが、100株だけ持った場合が1.2%と最も高く、優待内容がランクアップするにつれて、「JT株に投資が必要な最低金額」に対しては利回りは低下していくようです。私はたばこが大嫌いです。

明治ホールディングス(2269)の場合

最後は8位の明治ホールディングスです。世の中によく知れたブランドです。ウェブページの写真ではお菓子やカレーのルー等が3,500円相当の詰め合わせではもらえるようです。

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同様に、この株主優待で得られる優待利回り算出に必要な算数です:

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なんと、優待利回りはたばこ屋さんよりも低いようです。それでも8位にランクインするんですね‥。

 

以上のように、私がネットで適当に見つけた「株主優待ランキング」で2位、4位、8位に入る企業の優待を調べたところ、株主優待利回りは高くて2.6%、低くて0.3%程度でした。これを見るに、株主優待でのランキングは純粋な「優待から得られる経済的な便益」ではなく、「(身近なブランドやお店で使えるという)親近感・お得感・イメージ」が大きく影響していると推察されます。

株主優待をもらうことによって得られる癒し効果やほっこり感を重視しているなら、それは個々の価値観でありこれらを買うことにはなんら異議はありません。しかし「優待は本当にお得である(経済的なメリットが有意なレベルで存在する)」と主張するとしたら、それは言いすぎだと思います。

(補足ですが、上で算出した「優待利回り」はあくまで「その株を買った(と仮定する)時の株価に基づく利回り」でしかないので、買ったあとに株価が下がればその時点での利回りは上昇し、逆に株価が上昇すれば利回りは下がることになります。)

「優待で得られる経済的便益<<<優待を得るために買った株の価格変動による含み損益の振れ」という事実

上記の3社について、直近2年間の株価推移のグラフを下に示します。「優待で得られる利回り(せいぜい1~2%)」と、「株価の騰落率」を比べてその規模感の違いを確認するためです。

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見ての通り、(目視ですが)3銘柄いずれについても過去2年間の株価の大体の平均水準と高値圏・底値圏の乖離率を出すと、+/-14%~+/-19%となりました。高値圏と底値圏の乖離も30-50%くらい値差があります。

「優待の利回りが〇〇%」と1桁前半%の中での高低をいくら議論しても、一歩下がって株価を見ればそれよりも10倍オーダーで大きな変動があるということです。

2%の優待利回りを手にしても、株を買った時と比べて株価が10%下落していたら、(もしもその時点で売却したら)トータルでは当初投じた金額の8%程度の損失になります。

繰り返しですが、無論、だから株主優待銘柄を買うべきではない、と言っているわけではありません。あくまで「優待を目当てに・優待ありきで」買うと、その経済的便益の小ささにギャップを感じる可能性があるため、やるべきではない、という考えです。特に、投資に振り向けられる原資が有限の我々一般人の多くは「優待目的」で買うべきではないと思います。

逆に、「優待目的」で株を買っても別に良いと思える人物像をあえて挙げるとすると、「キャッシュが余って余って仕方ないんだ、使う予定もないし、預金で寝かせているだけなくらいなら株に投じて配当と優待をもらって楽しもう。株価が下落?大丈夫、倒産して株価がゼロにならなければ、いつか株を買った頃の値段に戻ってくれさえすればOK。何年でも気長に待てるよ~」という人です。周囲にそういう人がいたら教えてください。おともだちに(以下略

株価は様々な要因により下がることもあれば当然上がることもあります。ですので、「優待目当て」で買った銘柄でも、ふたを開けてみれば株価そのものが何十%も上昇した、ということもあり得るわけです。

 

株主優待」や「配当利回り」で過去5年間に日本たばこ産業の株を買った人の末路

最後に、JTの過去10年の株価推移チャートです。

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株価はピークから半値以下ですので、配当や株主優待の分の価値は株価下落による元本棄損で軽く吹き飛んでいるはずです。

これを見てもなお、JTを「高配当銘柄!」「株主優待銘柄!」と言って騒ぎ立てますか??

 

長くなってしまったので、次回へ続きます。