お金と生活の知恵、時々ふつうの30代

少しだけ金融に詳しい普通のサラリーマンが、お金や投資や生活について日々気付いたことをつぶやきます。

いい加減な「持ち家か賃貸か論争の決着」記事について

今日はこちらの記事についての「感想」を述べたいと思います。

(※記事が古いのは、2018年にこの記事を見つけた当時「なんじゃこりゃ」と思っていつか感想を書こうと保存しておいたのを、3年の時を経て封印を解いたためです)

 

持ち家か賃貸か:筆者にとっての正解は「持ち家」で、なおかつ「資産価値の高い持ち家を買いなさい」ということだそうです

では、どんな家を買えばいいのか。ずばり、資産価値の高い家です。

家計は複式簿記の考え方が大切です。バランスシートで資産と負債のバランスをほどよく保つためには、資産価値の高い(資産価値の下がらない)物件を選ぶべきです。

 正直申しますと何をおっしゃっているのかよく分かりませんでした。頑張って紐解いていこうと思います。

  • 可能なら持ち家を購入しよう、なぜなら「老後対策」になるから
  • すぐに資産価値が低下するような物件だと不測の事態が起きたときに家の価値が下落し、慌てて売却しても借金が残るリスクがあるので、資産価値の高い(下がらない)家を選ぶべし
  • しかし老後にローンを抱えるとリスクなので定年までにはローン残債がない状態の家を確保すべし
  • 資産価値の高い家とは「交通の便良し、生活インフラ充実、環境良し、近隣住民・管理の質良し」のことで、(素人でも)これを条件として目利きすべし
  • しかし「80歳までの住宅ローン」といった無理な資金計画は論外で身の丈に合った金額の住宅を購入すべし

 大体こんな感じかと思いますが、箇条書きにするのに随分苦労しました。

おそれながら端的に申しますと相反するような関係にある(値段が高すぎないけど資産価値は高い家とか)条件をばらばらと述べただけでほとんど役に立たないアドバイスだなと思います。

「資産価値の高い家を買いなさい⇔しかし高い家を買って老後までローンが残るようなことは避けなさい」

とおっしゃっていますが、そこまで「好条件」の物件は当然に価格が高いため、それを買おうとしたら筆者が避けるべしと言っている「身の丈に合わない高額の住宅を購入」に結果的になり得るでしょう。よほどの掘り出し物なら可能かもしれませんが、それを一般人が当たり前のように手に入れるのは困難だと思います。

また、筆者は公認会計士の方だということで、複式簿記の概念を紹介して(冒頭の引用部分の後半部)「資産と負債のバランスをとるべし」とおっしゃっていますが、価値の高い資産を買うと(ローンで買っている人は)同時に「負債」も増えるわけです。単にバランスしているかどうかばかりを気にして負債そのものの規模(収入に対する比率など)は無視していては「不測の事態」が起きたときに借金の返済が滞ってしまって破綻リスクが高まることは自明でしょう。これは企業について言えば「どんなに借金を増やしても構わないので、とにかく高級な製造設備に投資をしましょう」と言っているようなものですが、そのような会社は金利が上昇したり不況になったりしたときに破綻リスクが高い・・ということは公認会計士の方でしたら当然ご存じです。

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以下の点をよく確認してください、とのことですが:

  • 交通の便がよいこと(駅徒歩7分以内、通勤に便利な路線、急行停車駅、都心に直結した路線であればなおよい)
  • 病院、郵便局、銀行、スーパー、学校(子どもがいる場合)が近いこと
  • 環境(治安、道路状況、近隣住民の質など)がよいこと
  • マンションの場合、住民の質、管理の質がよいこと

このような好条件揃った中古不動産はそこら中に転がっているわけではありませんので、価格も相当に割高にならざるを得ないと思います。また、「近隣住民の質」のようなことを一般人が正確に判断できるものでしょうか。この筆者は「定年までローンが残らない」ようなお値打ち価格の物件を見つけるツテでもお持ちなのかもしれませんが、「一生に一度や二度の買い物」の一般人がそれを探し当て、しかも他の購入希望者に取られることなく、割高な価格を提示することもなく入手することのハードルはなかなか高いと想像できます。

つまるところ、この筆者の主張通りに理想の持ち家を探し選び買える状況というのは、極端に言えば日本中で購入する持ち家を探しているのが自分一人で(=「良い物件」を取り合う競争相手が存在しない)、物件候補はふんだんにある(=素人でもたくさん吟味すれば種々の条件をしっかり満たす物件を探し当てることができる)、という極端な状況下ということになります。

 

・・といった具合になんともいい加減な記事だなとというのが私の個人的な感想でした。いったい何の目的でこの媒体はこの記事を載せたのか・・ああそうか「持ち家・賃貸論争」がアツいからとりあえずそのタイトルの記事を載せてみたわけですね失礼いたしました。

というわけで記事のサブタイトルに「公認会計士が『論争』に決着をつける」とありましたが、決着がつくどころかずさん適当いい加減ミスリーディング矛盾だらけな記事であることに異論をつけようがないという意味でのみ「決着」がついたのではないかと思います。本日はこの辺りで失礼いたします。